【 アーチング 海外ボランティア日記 】

 2024年夏、アーチング協会の高校生セラピストがフィリピンのセブ島の貧困地域にてボランティアを行ってきました。

 世界の貧困・教育格差を肌で感じ、子どもたちの心の成長をアートセラピーを通じて手助けする事を目的とし、文部科学省が主催するトビタテ留学JAPANというプログラムを通じて3週間の海外留学をし、現地の子どもたちへアーチングをお届けしてきました!!

 その時のリアルな体験を綴った日記です。ぜひ、ご覧ください(^-^)

《 8月2日 ボランティア初日 パステルアーチングin山村スラム 》

今日は、ジプニーとバイクに乗って、山村スラムのNational Housing Authorityに行きました。ついた瞬間たくさんの子どもたちがお出迎えしてくれました。彼らの服はボロボロで、頭に少し虫も湧いている子もいました。この日がボランティア初日だったのでまずは、スラムの様子をうかがうと同時に、子どもたちのお話を聞いたりしていました。パステルアートができそうな机は無く、困っていると、小学校高学年くらいの女の子たちがコンクリートでできた階段で談笑しているのを発見。彼女たちに話しかけ、絵をかくのが好きか尋ねたところ、「絵をかくの好き!」と答えてくれたので持ってきたパステルと紙を出して、少し狭い階段で、絵をかいてもらいました。花の絵です。彼女たちはすごく夢中になって、何枚も素敵な絵を描いてくれました。また「これはあなたにあげる!」とその中の素敵な作品をくれました。途中、小さい子どもたちが来て、パステルやパステルを削るための網をこっそり持ってこうとして大変でした。ほかの日本から来たボランティアの方は、筆をたくさん取られてしまって、一本しか返ってこなかったとか。折り紙なども折ってあるものは、すぐ捨てられており、白紙のものだけをやたらほしがります。ボランティアとは何か、深く考えさせられました。帰り際には、パステルアートを一緒にした女の子たちが、毛糸でできた花を私にくれて、すごく心が温かくなりました。たくさんの感情がこみ上げた初日でした。

《 8月3日 孤児院での絵本アーチング 》

この日はAsilo De La Milagrosaという孤児院へ行きました。

ここには、様々なバックグラウンドの子どもたちが暮らしています。

赤ちゃんから大学生までが生活しているそうです。

この日は7、8人の小学生から高校生、そして3歳くらいの子ども、またボランティア団体のスタッフの方に向けて、絵本アーチングを行いました。英訳した不思議な力を持つひまわりの男の子の絵本「きみってとってもすてきだね!!」を読み聞かせした後、自分自身のオリジナルのお花をパステルを使って描くということをしました。絵本の読み聞かせを行っているときは、みんな真剣に聞いてくれて、ページをめくるたび「わー、すてき!」、「かわいい」などとリアクションしてくれました。花の絵を描いているときは、パステルという画材を初めて見た子が多く、興味津々でみんな描いていました。パステルをいっぱい削って粉をたくさん作る子、動き回りながら描く子、いろんな子どもたちがいて楽しかったです。

《 8月4日 海上スラムでアーチング 》

今日は海の上にある海上スラムへ行きました。

集会場に行って活動をするのですがそこへ行くまでの道のりがすごく険しく、不安定な薄い木の板の上を渡りました。下は真っ黒な海で、毎日ここを行き来するのはたいへんだろうなあと感じました。集会場には赤ちゃんから高校生までのここのスラムに住んでいる子どもたちがいて、今回は2歳くらいの子から10歳くらいの子どもたちと一緒にパステルを使ってお花の絵を描きました。また、よっぽどパステルを気に入ったのか自分の名前や私の名前などもパステルを使って描いてくれました。みんなほんとに楽しそうで私もとてもうれしくなりました。海の上で、とても環境の悪いところで生活しているのに笑顔を絶やさない彼らは輝いて見えました。

《 8月6日 孤児院で2回目の絵本アーチング 》

今日はTHE CHILDREN OF CEBU FOUNDATION ,INC.という孤児院へ行きました。ここの子どもたちは両親から暴力などを受けて逃げてきた子が多く写真を撮ることはできませんでした。この日は中学生くらいの子どもたちに絵本アーチングを行いました。この日も「きみってとってもすてきだね!!」を読み聞かせた後、自分自身のオリジナルのお花を描いてもらいました。男の子も女の子もみんな比較的おとなしい子が多くて、とてもやりやすかったです。絵本もみんな感動してくれて、毎回ひまわりくんが褒めるたび拍手してくれたのがうれしかったです。

《 8月8日 初めて現地の小学校へ 》

今日はtejero elementary school という公立の小学校へ行きました。

 

小学校4年生のクラスを任されました。みんなすっごい元気で、積極的に話しかけてくれました。この日はみんなで大きな模造紙に桜を描きました。私も一緒に描いたのですが、みんな本当に人懐っこくて描いている途中に私の背中に乗ってきたり、何人もが同時に話しかけてくれてわちゃわちゃしていてとっても楽しかったです。完成した作品は担当したクラスに寄付して飾ってもらいました。すごく癒された1日でした。

《 8月14日 公立の高校で絵本アーチングとイルカのパステルアーチング 》

今日はDon Gerardo Llamera Natinal High Schoolという公立の高校へ行きました。

一つ目のクラスでは、イルカをパステルを使って描きました。高校生の男の子たち15人ほどに向けて行ったのですが、みんな説明もしっかり聞いてくれて、限られた道具を分け合って使ってくれてとてもやりやすかったです。作品もどれも素敵なものばかりで素晴らしかったです。みんな集中して取り組んでいて完成した作品を嬉しそうにみている姿が印象的でした。

 

また二つ目のクラスでは男女10人ほどの高校生に向けて、絵本アーチングを行いました。「きみってとってもすてきだね!!」を読んだのですが、ヒマワリの男の子が「You are so amazing!!」とほかの植物たちをほめるという場面ではみんなで一斉に「You are so amazing!!」と言ってくれて、うれしかったし、やりがいを感じました。みんなお花を描くときは集中して描いていてとっても素敵な花の作品が出来上がっていました。

《 8月17日 墓地スラムでの活動 》

今日は墓地スラムChinese Cemeteryへ行きました。もともと中国の富裕層の人の墓地だったらしく死体は中国に戻されたようですが、棺もおいてあり本当に墓地の中にあるスラムでした。家庭訪問を行った女の子とパステルを使って一緒に絵をかきましたが、写真を取り忘れていました。墓地スラムはとても治安が悪いらしく、銃声も聞こえてくる時もあるそうです。たくさんの家族がここに住んでおり、驚きました。絵を一緒に描いた女の子の将来の夢は医者になってたくさんの人を救うこと、と教えてくれました。立派な夢を持っていてすごく素敵だと思いました。

《 あとがき 》

私は「相対的貧困」と「絶対的貧困」の違いを実際に留学して、肌で感じました。中でも、物乞いをしているストリートチルドレンの姿は強く印象に残っています。さらに、ストリートチルドレンの女の子の家を訪問する機会もありました。彼女の部屋はとても狭く、少し広いトイレほどのサイズしかありませんでした。「こんな場所で生活しているのか」と、言葉にならない衝撃を受けました。しかし、そんな状況にもかかわらず、明るく振る舞う彼女の姿に、自然と涙がこぼれました。その涙は、単なる「かわいそう」といった感情ではなく、もっと複雑で深いものでした。また、スラムの家々や孤児院での生活に加え、両親から虐待を受けた子どもや、赤ん坊の頃に捨てられてしまった子どもたちと接し、彼らが抱える多様な背景を知ることができました。こうした現実を目にした一方で、フィリピンの貧しい子どもたちはみんな、学びに対して強い意欲を持っていることも感じました。スラムの子どもたちに「学校は楽しい?」と尋ねると、「もちろん!」と笑顔で答えてくれました。彼らは立派な夢を持っており、「医者になって多くの人を救いたい」「CA(キャビンアテンダント)に憧れている」「学校の先生になりたい」といった様々な夢を語ってくれました。特に印象的だったのは、小学校でのアーチングの活動中、子どもたちがたくさんの質問をしてくれたことです。「どうしてこんな発色になるの?」「混ぜたらどうなるの?」など、彼らの「なぜ?どうして?」という姿勢は、とても素晴らしいと感じました。日本では、私自身も周りの目を気にして質問ができなかったことが多かったので、彼らの姿勢には大きな感銘を受けました。しかし、そんな夢を持っている子どもたち全員が、その夢を叶えるために必要な教育を受けられるわけではありません。ですから私は今後、全ての子どもたちが教育を平等に受けられる世界を目指すと同時に傷ついた子どもたちの心をアーチングでケアしながら、夢に向かって前進できる環境を整えるために何ができるのか、具体的な方法を探りたいと思います。